ときどきおやつが必要なので見まくりますがネタがなくなってくると少し前のをDVD借りて観ます。2010年のアメリカ製おやつ「デスドール」はちょっと珍しい呪いの映画。
原題は「Needle」っていって、つまり呪い人形に針を刺すと呪われた人が実際にうぎゃーってなります。純粋に呪いです。ホラーです。切り株描写もわりと見応えあります。
この呪い、ただの心的呪いじゃなく、主人公青年のパパの遺産で、昔の何やら箱のような装置です。この装置、装飾が施されており血を入れてカリカリとハンドルを回すと呪い人形を製造する機械です。何世紀も前の錬金術的摩訶不思議装置ですね。そっち系の呪い装置です。
こんな装置が出てくる映画を最近何か観ましたよ。これもちょっと前の映画でギレルモ・デル・トロのデビュー作「クロノス」です。訳ありの考古学的遺物はやっかいなホラー装置であり、錬金術的な魅力を備えたストーリーテリングに最適なアイテムですね。昔はこういった装置の物語がよくあったような気もします。だからちょっと懐かしいテイストです。
その考古学的呪いのホラーと学園ドラマをくっつけた映画が「デスドール」です。
主人公は何かとがんばる好青年、友人もいますしガールフレンドぽいヒロインのお嬢ちゃんもいます。女友達もいます。学園です。青春です。
ガールフレンド含め女友達の厚化粧に注目です。普段可愛いスペイン女優ばかり見ているからアメリカの厚化粧ねえちゃんたちに一瞬ひるみますがこれはこれで味わいがあります。
主人公にはちょいワルのお兄ちゃんがいます。スキンヘッドで落ち着きのないちょっと怖そうですが人なつっこい強面のお兄ちゃんです。このお兄ちゃんを見てるとEP-4のユンさんを思い出します。いえ、さほど似ているわけではありませんが、印象として。このユン兄ちゃんがなかなかいい役どころとなっていまして、所謂たよれる探偵役を受け持ちます。
そうなんです。この映画、ただの呪いのホラーではありません。その実体はミステリーです。
つまり本筋がどこにあるかというと、いったい誰が呪いをかけている犯人なのかということなんです。
呪いからくり装置もあるし呪いそのものもホラーの威力、しかも学園、しかもミステリーで犯人捜しがメインです。
実際、呪いとかどうでもよくなります。いや違う、呪いというものに重きを置かず、ストーリーの中にすぐに溶け込むんですよ。誰も疑わないし呪いがあるのかないのかみたいな葛藤はまるでありません。誰もが素直に呪いを認め「じゃあ呪ってるやつは誰だ」と簡単にミステリーに移行します。呪いに疑問を挟まないんですよ。
この潔さがたいへんよろしい。
昔の探偵モノやミステリーでも似たようなことが常態化していました。殺人が起きて人が死んでも、一瞬驚くだけでみんながすぐ「犯人は誰だ」の方向に一直線に向かいますね。「人が死んでんねんで」と泣いていてもお構いなしに探偵が推理し始めます。
それと同じ効果が「デスドール」にあります。呪いについての疑問や恐怖もなく親友が死んでも一瞬驚くだけです。ホラー状態のむごい現場を見てもすぐ次の別の行動に向かいますね。いいですね。
極めつけはラストシーンです。クライマックスでは映画的に盛り上がりわーとかぎゃーとか大変なことになって、ようやく事が終わり、普通の人間ならげー吐いて熱出て倒れるところをこの主人公とヒロインはやらかしてくれます。つまり今までミステリーに重きを置いていると思い込まされていましたが、実は学園ドラマであったということを痛恨の一撃で思い知らされます。
このラストシーンのセリフに思わず声を出して笑ってしまいますよ。やられたっ。ほんと、ここまでくればこれは監督、あんたやっぱりわざとやっていたなと確信が持てます。思いかえせば、とても面白いストーリー展開でした。
実際まあまあ大したことのないおやつ映画のひとつと言ってもいいんですが、私は「デスドール」に極めて好意的なんです。
2010年のアメリカ映画「デスドール」は呪いの学園ミステリーで、なんとなく面白い映画です。ただしこの映画、紫煙観点から残念なことが一つだけあるんですよね。「デスドール」ではややチンピラ系の味わいお兄ちゃんが出てくるんですが、この彼がどういうわけか禁煙中であるという。ああそうですかと、それだけなら何ら引っかかるところではありません。
このお兄ちゃんはストーリー的に探偵役、映画的には美味しい役どころの好人物ですが、ラストシーン近くでちょっと残念キャラになります。
すべてが解決し、弟とも関係が改善、仲良く兄弟で船に乗ります。兄弟仲が戻って上機嫌なお兄ちゃん、つい無意識で煙草を咥えますね。「禁煙したんじゃなかったの」と弟から微笑みツッコミを受けます。ハートフルシーンですね。
こういうとき、どうですか。弟くんは本当に非難してるわけじゃなく、ニコニコしてツッコミ入れてるわけです。当然ここは気持ちよく煙草を吸ってほしいところですよね。
ところがお兄ちゃんときたら、弟にツッコまれて「ああそうだった」とばかりに煙草を投げ捨ててしまいます。
「ほーら。わだかまりもなくなり、こんなドラッグはもう不用なのさ!」みたいなその態度に映画部室内ではブーイング出まくりです。「こら煙草捨てんな」
「そこは気持ちよく吸ってぷはーっってやるべきシーンでしょうが」せっかくの好人物がこのラストシークエンスですっかり馬鹿に見えてしまいました。
ということで、映画自体は面白かったんですけど、紫煙観点からは大きなマイナスをつけざるを得ませんね。
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