「オープン・グレイブ」という映画があって、ゴンサーロ・ロペス=ガイェゴ監督作品ですが、これがなかなか面白くて、でもちょっとだけ惜しいところとかあって、でもやっぱり面白くて、それで他の映画も観てみようとしましたが「Nakedマンハンティング」はすでに観ていたし「オープンウォーター3」も観てますし、で、残った「アポロ18」を観るべく奮闘しました。嘘です奮闘なんかしていません。
「アポロ18」がどんな映画かというと、アポロ計画、月面着陸の偽ドキュメンタリーです。いえいえ偽の月面着陸をでっち上げる映画ではなくて、月面探査の偽ドキュメンタリー、モキュメンタリーとか言うんですか?そんなのです。
かつて皆が熱狂したアポロ計画は20号まで計画があったそうですが17号を最後に消滅しました。それで、でも実は密かに18号を飛ばしていて、その秘密映像があったんですよ!っていう設定でドキュメンタリーを作ります。そんな話です。話というか、そんな設定の映画です。全部が何某かのカメラによる撮影の再現、つまりPOVの一種ですが、主観視点というよりドキュメンタリー仕立てに重きをおいています。宇宙船内に設置されたカメラや手持ち16mmカメラを編集してつなげたという体ですね。
よくある偽ドキュメンタリー風に、冒頭で「これは秘密の映像が発見され編集したものである」とか何とか宣言されます。面白いのは、その秘密映像を「ネットの片隅で発見された」と書いたところですね。ここでちょっと笑うところです。「ネットの片隅て、どこやねん」と。
という感じの映画ですが、残念ながら面白いのはそこだけで、本編は至って真面目なドキュメンタリー仕立て。月の秘密映像を捉えるシリアスなドラマです。舐めてかかっていると、ホラー演出にビクってなったりします。
すごく真面目に進行してそして終わるので、もうちょっとぶっ飛びの展開とかふざけたことを期待していた自分はちょっぴり残念、でもふざけた映画じゃないことはなんとなく感じ取れるので勝手に面白いことを期待するほうが悪いです。この手でふざけた面白いのが見たければ「トロール・ハンター」を観ておけばよろしい。
設置カメラや手持ちカメラによるドキュメンタリー仕立てという設定、アポロ計画には続きがあって、良からぬものを発見したのだ、そのようなアイデア自体がちょっと今更感がなくはないですね。だから「ただそんなのだけじゃつまらんから何かぶっ飛んだことやらかしてくれるんじゃないか」と思ってしまったわけですがすいません、余計な期待は事故の元。
ただね、わりと斬新さも何もないわりにはですね、まあまあ面白いんですよ。登場人物はほぼ3人しかいなくて、最初は「三人しかいないのに誰が誰だかわからんな」と思っていたらお話の進行と同時にちゃんとそれぞれ肉付けされていって個性も出てきます。ちゃんとドラマが作られてます。この監督が描く人間の個性、わりと好きなんです。
あとさっきも書いたように、だんだんとホラー仕立てになってきて、基本これホラーです。じわじわ系というよりびっくり系だったりしますが悪くありません。ホラー演出いい感じす。月世界にいたあいつらのお茶目さとホラー演出の妙技、これがやっぱり「アポロ18」のいいところですね。
それから、70年代のアポロ計画っぽい月世界の特撮映像なんかはやっぱり優れています。真の主人公はこの特撮です。エンドクレジットに延々流れるVFXの面々、沢山の人が月世界の偽ドキュメンタリーを作り上げた感ですね、そういうのがあります。「こんなのが上手に作れるんだったら実際のアポロも月になんか行ってなんじゃないか説」が出てきてしまうのも頷けます。
そこで思い出すのが最近の「ムーン・ウォーカーズ」ですね。月に行ったことにする捏造フィルムを作るお話です。あれで撮影していた月世界もこんな風に仕上がったのかなあなんて映画をまたがりわくわくします。わざわざキューブリックに依頼しなくても「アポロ18」みたいな映画が作れるんですものねえ。と、現実と映画と別の映画をごっちゃにした妙な感想になりましたが。
ということで「アポロ18」でした。実際の話、2011年の映画にしてはややアイデアが弱いとは思います。「トロール・ハンター」「アパートメント:143」など、似た時期に良いアイデアの良作がいくつもありますもんね。でも特撮月面映像の出来映えやホラー演出でチャラかなと。そんな感じで悪い印象はありません。