ラザロ・エフェクト

The Lazarus Effect
大学の研究チーム、蘇生可能な血清の開発に成功するものの外部に漏れて成果を根こそぎ奪われてしまいます・・・。ジェイソン・ブラム製作によるSFホラースリラーちょっぴりサイコや記憶系覚醒系生死感系ありの楽しいおやつ「ラザロ・エフェクト」はラザロ兆候とは関係ありません。
ラザロ・エフェクト

大学の研究チームは延命の研究からちょっぴり逸脱し、蘇生する血清作りに励んでおりまして、死んだ犬で実験していたらこれがまんまと成功、しかし犬の様子がちょっと変だし経過を見守ろうね、くれぐれも内密に、バレたらえらいことだよ、と釘をさすもののサクッとバレて大学からは研究を打ち切られスポンサー企業は買収されその親会社が研究成果を根こそぎ奪っていきます。がっくり気落ちする研究チーム、でも血清をこっそり隠し持っているのよ、これでもう一度実験して先にデータを揃えて成果を確保しよう、ということで研究室に忍び込んで実験開始、しかしそこで事故発生・・・

という序盤からあれよあれよとストーリーが進行します。90分に満たない尺の中で蘇生の実験から生死感に関する会話シーンから犬から人から悪夢からトラウマからもういろんなネタを仕込んできてわーわー言いながら観てたらあっという間にエンディング。あーおもしろかったー。やっぱりジェイソン・ブラムのおやつは格別やな、とすっきりさわやかです。

ところで「ラザロ徴候」という言葉ありますね、「ラザロ・エフェクト」では血清の名前が「ラザロ血清」って言って死者と蘇生の話ですので、キリストのお友達のラザロ(一度死んで蘇生した人)に掛けてます。もちろんラザロ徴候もラザロから頂戴したネーミングなのでそういう意味では関係ありますがそれ以外は無関係です。でもどうしても「ラザロ徴候」を連想しますよね。

ずっと以前、脳死(と言うか臓器移植)に反対しているときにラザロ徴候のビデオを見る機会があって、あれはびっくりしましたねー。あのビデオの真贋は今となってはわかりませんがとにかく初めて見たときには大きなショック受けました。

ラザロ徴候というのは、脳死判定された人の動きのことです。脳死判定ラッキーって言って腹をさばいてはらわたをえぐり出そうとしたら手足をバタバタ動かしたり鳥肌が立ったり血圧が上がったり身体を捩ったり逃げようとしたりする動きをすることがあって、これをラザロ徴候と名付けたんですね。

脳死を人の死と考えている人にとっては「無意味な反射の動き」、脳死判定に疑問を持つ人にとっては「生きている証拠」と写ります。医学的にはただの反射ということで収まっていますが、反射で済ましてええのかというような、素人が見たら卒倒しそうな動きをしますから、お医者の世界ではラザロ徴候を決して遺族に見せないように配慮しています。そりゃ、遺族があの動きみたら「ひとごろしっ」と叫びますよ。
 ところで生きてるとは何でしょう。「無意味な反射の動き」って何でしょう。人はすべて意味がある動きでできていますか。ほんとうの死体は無意味な動きなんぞしません。死んでいるからです。脳死判定に脳血流の確認をしないとか、脳波が出ているのに「死んでます。無意味な脳波です」って言いますがほんとうの死体から無意味な脳波なんぞ出ません。
「無意味な動き」をするやつはみんな死体ということが脳死判定と臓器移植の思想です。じゃあわかった、おれは死体だ無意味だから。あなたも死体だ。おまえらみんなくさった死体じゃ。

話があらぬ方向に暴走しておりますので戻します。そんなわけで、映画「ラザロ・エフェクト」は、現実のラザロ徴候ほどはショックを受ける内容ではなく、ラザロ徴候を念頭には置かないほうがいいです。多分一般的にも蘇生したラザロという人はよく知られていてもラザロ徴候というのは知られていないと思いますので問題ないとは思いますが。

で、それで「ラザロ・エフェクト」がおもろないのかというと、これが十分おもしろいんですね。テンポもいいし、実は技術的にも優れています。技術とは映画技術のことで、短い尺の中で要点を観客に伝えたり、ぐだぐだ説明しないのに状況をしっかり使えることができるという、そういう技術です。これがあるから短い尺でも破綻なくちゃんと物語に感情移入できます。こういうのって普通に良い映画ばかり見ていると気づきにくいのですが、実はすごく演出の技術が必要なところなんですよね。

デヴィッド・ゲルブ監督は寿司職人のドキュメンタリー「二郎は鮨の夢を見る」で話題だった方ですね。

そういえば、僅かな会話シーンに良い部分があります。主人公カップルが生死感の議論するところ、もうひとつ、1時間くらいの心停止中に数年分の夢を見たと話すところです。ほんのちょっとした部分ですけどこうした細部がよい味付けになっています。

あとは、そうそう、序盤のあるシーンについてです。
こめかみに注射するためだけの大げさなアームの機器を自慢するシーンがあります。ここは笑いました。SF映画でよく出てくる見掛け倒しの大げさなアーム機械をパロってますね。

もうひとつお気に入りのシーンについて。研究室でたばこを吸うシーンですね。「ここ禁煙よ」と注意されます。でも「ふ〜ん」と言って聞きません。いいですね。大事なのは、先に気を回して「ここは禁煙かな~、たばこは我慢しないとな〜」みたいな、へりくだった卑屈な態度を取らないところです。卑屈にへりくだって気を回し遠慮して縮み上がってストレス溜めて禁煙馬鹿の下僕となり怯えて震えている普段の我が身を恥じます。そうだアメリカではとらんぷさんがだいとうりょうになったぐらいだからおれも強気でいいのだ、叱られたらあぁそうなのと言って消すなり吸い続けるなりすればいいだけではないか、それくらいのおおらかさや強さがないとやってれっかあほんだらぼけかすと勇気をもらい…

また話がすっ飛んできたのでこの辺で終わっときますが、この手の軽い映画に限って筆が走るのはどういうこった。大事な映画のことは何も書けてないのに。筆で書いてないけど。

ということで「ラザロ・エフェクト」でした。ブラムハウスの映画はもうそれだけでハズレ無しの信頼印、最高のおやつメーカーです。

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