物心ついて以来ずっと映画の人ジョディ・フォスターは今では監督もやっていてそっちでも実力を見せておりますね。「マネー・モンスター」はちょっぴり金融至上資本主義経済の社会批判も混ぜ込んだりしていそうですが実際のところ社会派の側面はほとんどなくて痛快系クライムムービーで真っ当素直な娯楽作品です。
司会者演じるのはジョージ・クルーニーで、ニタニタ顔と饒舌がよく似合います。近頃この方はすっかり垢抜けキャラも定着してきまして、こないだの「ヘイル・シーザー」なんか垢抜けるにもほどがあるというレベルでアホの役を嬉々として演じておられてですね、かつてジャーナリストを目指していたり真面目な社会派映画を作ったりしていたシリアスな印象からの脱皮たるやヤケクソレベルで尊敬できます。
素人を煽って株を買わせたりそれを利用して金持ちがより儲けるための経済番組「マネー・モンスター」でも歌って踊る悪のり司会者です。そして生放送本番中に番組ジャックが現れます。銃を突きつけられ爆弾チョッキを着させられる司会者です。
犯人は番組に煽られて僅かな全財産を失った青年で、おれをテレビで映せと息巻いております。カメラに向かって悪態をつき稚拙な言葉で金融や番組を批判します。
という番組ジャックとそれに対峙する司会者やテレビスタッフのお話ですね。面白い展開になっていきますよ。
ジョディ・フォスターとジョージ・クルーニーですから観る人はもうちょっと真面目に社会批判の側面に期待するかもしれません。ですがそれに関してはほんとそぎ落としています。メインのストーリーになるある会社の不正な取引についても、社会やシステムに目を向けず、ちっこくてせこい犯罪の話に終始します。金融とか経済とか資本主義とか格差とかそういう問題に注力する作品ではまったくないので誤解して妙な期待をしないほうがいいでしょう。
とは言え、ほんの僅かにそれはあります。痛快娯楽作品の中にチクリと社会批判を入れ込むというのが、これがメジャー映画の作法というものです。
「時給14ドルで子育てできるか!」と叫ぶシーンもそういうののひとつですね。金持ちの司会者が犯人をおだてようとしてべんちゃらを言ったりする流れで出てくるセリフです。一瞬黙り込んでしまいますね。そうですね、時給14ドルのこの男がまともな家族を持って子育てできる可能性は限りなく低そうです。
そこで映画を観ている日本人の若者はさらに愕然とします。「いいなあ。時給14ドル」
泣けてきますね。でも大丈夫、時給14ドルを羨ましがるような若い子は映画を観るというような贅沢はできませんのでこのセリフを聞く機会はありません。