「上手い」としか言いようがない。映画技術に関してはアメリカ映画はやはり伊達じゃないですね。
次々に犠牲者が出るタイプのホラー・パニック映画で、これほどきっちり人間を描けてる映画ってそうそうないんじゃなかと思うほどの出来映えです。ちょっとした一言、ちょっとしたカットだけで登場人物の背景を誰にもわかるように語り尽くす、これぞ映画の技術。
観客は知らず知らずにこの映画の登場人物の一人になったような気持ちになるでしょう。
そして徐々に絶望感に浸っていきます。主人公と絶望の共有をしていることに無自覚なまま、エンディングに向かって漂っていきます。もう最後のほうの絶望感たるや相当なものでありまして、ほんとじわじわと辛くなってきてたまんなくなります。
最後の衝撃は「それもやむなし」と思ってしまった観ている側の罪悪感と無関係じゃないでしょうね。これほど掻きむしられるなんてありですか!と心で絶叫しながら、それでも主人公の行動にも同情的になっていたり、そのことで同じ罪悪感や後悔を感じたりするわけです。単なるバケモノ映画で何という心表現でございますか。
「裁く傲慢さ」について根深いアメリカ人と、心中事件に対して情状酌量を許してしまう日本人の気質の違いが、この映画に対する感想の違いにどう出るのかに興味があります。
エンディングばかりに注目が集まりがちですが、あのエンディングを向かえるための周到なストーリー展開にこそこの映画の価値があると思うし、それをきっちり表現できている映画技術は神業と言っていいと思います。
そしてもう一点、この監督のバケモノ映画への思いもまた本物、完全に「そっち系」の人でもあると感じられるバケモノ表現でした。それがまたいい!
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