イラクで人質になった人たちへのバッシングを見て吐き気を覚えていたのも記憶に新しいところ。あの頃に流行してその後定着したファシストの大好きな「自己責任」なる無責任な言葉です。日本はもうあらぬ方向に行ってしまいました。この気色悪い世相があるかぎり救いはないですし、それが日本人の総体であるならば、日本人など存在の価値のない馬鹿者の集まりです。
ということでそのバッシングを受けた人をモデルにした映画です。バッシングをする側にわずかでも感情移入できる道理はありませんし、バッシングを受ける側に何らかの落ち度があったなどということは微塵も感じません。しかしながら、この映画は映画として最低だと私は感じ、そしてこの映画がものすごく嫌いです。
見終えてすぐ、書き殴った感想メモの下書きはこうです。
「高校生の卒業制作映画ですかこれは。とりあえず、ちゃんと作ってくださいなと思う。完成作品になり得ていない。評価以前。
もうちょっと親切に見るとすれば、ヨーロッパの淡々とした映画が好きで好きでしょうがないのかもしれない。
たぶんきっと欧州リアリティ映画へのオマージュだ。
カメラの動きや、淡々と日常を追う技法、エンディングの泣くシーン、すべて出来の悪いダルデンヌ映画の劣化コピーにしか見えない。
あれ。親切に見たつもりがまた貶してしまった。
理不尽な中傷を受けさらし者にされ社会から攻撃を受けた例のイラクに行った人たちを元にした映画だが、こんな無様な映画を作るくらいなら普通にきちんと発言をしたほうがなんぼかましだ」
という、ボロクソ言うててしかも怒ってます。
長い間、これは下書きメモと思ってましたがしっかり公開されていました。
たしかにダルデンヌ兄弟作品の劣化コピーみたいな作風に観てるあいだずっと苦痛でした。そして、モデルとなった女性が実際どうなのかはともかく、個人的な心境の発露に終始しておりまして、青春映画みたいにこころの苦悩映画として表現にするその目的は何なのだと、文芸路線リアリティドラマぶりっ子の底の浅さと「深いふり」の軽々しさ、社会問題に目を向けながら何も描かず満足げなその表現に目眩がします。
あれ?冷静になにか書き足そうとしてまた貶してしまった。こうなったらもう諦めます。単に、この映画が嫌いだったと言う以上の何も出てきませんでした。