「アモーレス・ペロス」「21グラム」「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガです。群像劇でお馴染みですね。この作品も複数の女性の物語が重なりあって構成されます。
ちょっと自暴自棄的で刹那的なレストランのマネージャー(シャーリーズ・セロン)、国境沿いに住む主婦(キム・ベイシンガー)とその娘、切り替えながらそれぞれの物語が描かれます。
「あの日、欲望の大地で」の原題はThe Burning Plain。
私はアホなので、最初「燃える飛行機?」と思い込んでいて、物語の途中で飛行機が出てきたので「おっ。これのことか」膝を打ってたのですが、それはPlaneやろっ、と自己ツッコミを入れておくとして、Plainって何でしょう。はっきり見える、明らかな、明白なといった形容詞と、不平を言う、嘆くといった意味が辞書に出ていました。英語はよくわかりません。
さてこの作品はサスペンスではありませんが、非常に緻密な構成でもってサスペンスフルに物語が描かれます。さすがに練りに練った脚本です。公開時は配給会社に思いっきりネタバレされて悲惨な目にあったようですが、幸い「ネタバレが酷い」という話を聞いていたので情報を遮断、純粋に鑑賞できました。
後になって別のレンタルDVDにてこの映画の予告編を拝見したところ、確かにあまりにも酷いネタバレで驚愕。アリアガさんが気の毒になってしまいました。推理小説でいうと、表紙に犯人の名と動機をさくっと書いているのと等しいですね。
予告編どころか、ネットにて散見できる「イントロダクション」というんですか、共通で使用されるあらすじみたいなのありますよね、あれ見ただけで肝心の部分がネタバレされていてますます気の毒に。あのあらすじ書いたやつは悪意のかたまりか?ただのあほか?ちょっと出てこいやコラ。って感じです。
まあしかし推理ものなわけでもないし、じっくり見ることによって生じる最後のカタルシスってのはもしかしたらネタバレされていても感じることが出来るかもしれないので何とも言えません。二度目の鑑賞のように観ることも可能ですかね。
で、肝心の中身についてですが、十八番の群像劇風味にて人間関係を立体的にとらえていて、やはりさすがです。心系のお話ですがミステリアスでもありじっくりかつ面白く見せてくれます。ただ演出に関してはもうちょっと刺があればいつまでも心に残る作品になったのにな、と偉そうなことを思ってすいません。よくできた脚本通りに忠実な演出なのですが、ぶっ飛んだ個性というものがあまり感じられなくて、見終わったときの興奮は月日が経つと忘れていくのかもしれないな、なんて思ってしまってすいません。
ラストショットは文句なしにすばらしいです。ラストショットにおけるあの顔、あの表情、見事です。奇跡が起きたかのような仕上がりです。このすばらしいラストショットだけは観た人の個人映画史に残り続けることでしょう。
シャーリーズ・セロンさんは相変わらず抜群にすてきですし、ここで注目すべきは思春期少女を熱演したジェニファー・ローレンスです。この子の演技、光ってます。
2008.04.15
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