気がつくと全身麻痺、かろうじて動く左目だけが頼りの、気が遠くなるコミュニケーションがはじまります。
不自由な身体での饒舌、といえば「海を飛ぶ夢」や「約束-プロミッセ」を彷彿とさせますが、こちらの饒舌は頭の中のみ、左目以外まったく動きません。
それにしても病人と饒舌という組み合わせのフランス語やスペイン語、いいですね。監督のジュリアン・シュナーベルは最初言語を英語にしようとしていたそうですが、フランス語になって本当によかった。
献身的な言語療養士や編集者、家族の姿にじーんとすること請け合い。
雑誌「ELLE」の編集長ジャン=ドミニク・ボビーが執筆した自伝「潜水艦と蝶」を映画化した作品だそうです。
映画的には、もっと地味な作品かと思いきや、POVを連想させる一人称視点や、くどいくらいのピンぼけ画面、かと思えばオーソドックスな佇まいのショットに現代的な幻想シーンと、変化に富んだ演出で物語や主人公の内面世界を描きます。一人称視点と客観視点の切り替え時なども非常に効果的に撮っていて感心しますよ。
えーと。私は言語療養士アンリエット演じるマリ=ジョゼ・クローズさんと、辛抱強い編集者演じるアンヌ・コンシニさんにゾッコンになりました。当たり前ですよね。患者は医師や看護婦さんに惚れるものと相場が決まっています。
2007年 第60回カンヌ国際映画祭 監督賞
ヴェネツィア国際映画祭 グッチ・グループ賞
サン・セバスチャン国際映画祭 ヨーロッパ映画賞
その他20を越える映画賞を受賞。
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