「陽のあたる場所から」ってタイトルは詐欺で、何やらハートウォーミングな香りを感じ取った人は正反対の映画ですから注意してください。辛い風が吹きすさぶ映画ですよ。
無言で身元不明の女性患者が気になり、あれこれとお節介を焼く研修医。次第に心通わせてはいくものの、この二人を待ち受けるのは不法滞在に対する腑に落ちない措置、離島の閉塞感、暮らしすらままならない貧困、政治と医療制度の壁、そして結局は無力という冷たい風です。
監督のソルヴェイグ・アンスパックはドキュメンタリー出身とのことで、登場人物の綿密な描写を通して社会を描くことが得意なのでしょうか。突き放したような、明快なような、尖ったような、なかなかにずっしりとくる作品です。
2007.4.7