悪名高いアルカトラズ刑務所。しかし悪名だけでなく有名です。数々の映画化により映画用語的にも有名になってしまって、そのため、今更アルカトラズに興味を持たなくなってしまうという逆説的残念なことにもなっているようななっていないような。よくわかりませんが。
1995年に作られたこの「告発」は、アルカトラズの実態をこれまでになくリアルに、じっくりと厭になるほど描き込みます。ケビン・ベーコンの演技も実に見事。壮絶と言っていい演技です。アルカトラズの理不尽さや恐怖が観客に重くのしかかります。
刑務所の理不尽さに立ち向かおうとする若い弁護士です。結果的に、この弁護士と囚人による友情がアルカトラズを閉鎖に追い込む裁判を実現するのですが、このような気概のある弁護士がかつてアメリカにもいたのですね。いまでもいますか?
刑務所に立ち向かうとは即ち国家にたてつくことに他なりません。
21世紀になって、これまでにないナショナリズムの台頭と洗脳の結果、国家に刃向かうとか、現状を否定するとか、ファシズムに立ち向かうとか、そういうことが全くなくなってしまいましたが、そんな今の時代にこそ、こういう映画が求められていると切実に思います。