どっしぇーっ。
これは凄い。ちょっと奥さん、これ凄いですよ。
冒頭は、米軍の出鱈目さのため猛毒を川に流すシーンで、これが怪獣出現の原因なのですが、ま、この冒頭は大したものじゃありません。私もこの冒頭シーンの馬鹿馬鹿しさと力の抜け具合を見て「この映画は日本的B級怪獣映画テイストの洒落?」と思い、やや脱力して見始めたんですが、だんだんとポン・ジュノ監督、威力を発揮しはじめます。
まずはスルメの足です。スルメの足のエピソードは私、かなり好き。くだらないんですが、ぐっときます。川辺の売店もそこの家族も、昭和みたいで馴染み深いんですよね。
そうこうしてるうちに、初っ端からいきなり怪獣出現です。
この川の怪物出現シーン、これ無茶苦茶すごいです。まさに悪夢。文字通りですよ。夢で見る怪物の登場みたいです。この川の怪物登場シーンで我が家の暗闇映画部屋は阿鼻叫喚、感動と歓喜の悲鳴がこだましました。このすばらしいシーンは必見です。
その後はもう目が離せないまま一気に最後まで突き進んで、見終わった後は満足感で席を立てず、思い返しては褒めちぎり、鑑賞後ビールを飲んで褒めちぎっては思い返すというループ状態。
この映画には見どころがたくさんあって、まずは家族ですね。川辺で売店を営む家族の物語が核ですが、主人公も父親も味わいありすぎてたまりません。コミカルさとシリアスさが高速で切り替わったり混ざり合ったりします。コミカルかシリアスかのどちらかしか求めないような偏狭な人間が見たら怒り出すのではないかと思うほどの多面的な演出です。
モンスターもなかなか見応えあります。それほど大きくなかったりするところがいいですね。あの、橋にぶら下がっているところなどはもはやアート。
アートといえばこれもわざとなのか洒落なのか、文芸映画によくある不思議なシーンも織り交ぜます。家族で食事するシーンは鳥肌ものでしょう。
あとアメリカ批判の部分ですが、アメリカ批判というよりも寧ろ茶化しています。茶化し具合も、コミカルとシリアスの高速展開&混濁の演出によって得も言われぬ間抜けっぷりを発揮。例えばあのバーベキューのシーンですよ。あそこはびっくりして大笑いで拍手。
クライマックスは子供も喝采の典型的娯楽アクションにて一気に盛り上げ、これはこれで拍手。
そしてエンディングもいいです。ここで冒頭でも感じた昭和感を再び思い出します。良い終わりかたです。
これは本気で素晴らしい映画でした。
エンドクレジットで流れる音楽もとてもよろしいです。
2010.5.28
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