都会の路地の奥に生きのこっている下町の商店街。ここが舞台の全てです。ほんの一瞬、表通りの都会が映りますが、そのときはじめて、今まで世界の全てであったこの商店街が、都市の発展からふるい落とされた辺境の一角に過ぎないことを痛感できます。
この映画の商店街には、その狭い世界の住民たちと同じく、郷愁と人情と偏屈で満ちています。
こういう商店街、みなさまの街にもありますか?私の街はこんな商店街だらけです。大通りの路地の奥、元は市場であったアーケードつきの狭い商店街で、ちょっと入り込めないような雰囲気さえ感じる下町in下町。下町風情という括りでは手に負えない感じすらします。こういう場所が舞台なわけですね。親しみ深いです。
主人公の若者はこの商店街からの脱出を謀るべく、ポーランド人になる計画を立てています。繰り広げられる商店街の些細な人間ドラマ、ちょっとした葛藤、ちっぽけな諍い、いいですね。それらをコミカルに、あるいは淡々と描きます。
始終手持ちカメラが不安定で、画角も小さく、常に広く見渡せないイライラを感じます。物語の小ささと商店街の小ささをより際だたせるカメラワークです。映画の中で、後半ほんの一瞬、画角が広がって固定された、これまでとは違うショットで収めたシーンが突然出てくるんですが、これが効果絶大。
この映画は小粒ながらなかなかの味わい深さを持っています。単純明快な「人情もの」とは一線を画す、鋭い何かがあるんですね。ま、鋭いっていってもちょっとした鋭さなわけなんですが。そこがまたいい。
音楽もいいです。
2010.04.02