面白そうなので観ましたら面白かったです。
観る前はセレブを追いかけるパパラッチのお話だと思い込んでいましたが全然違って、事故や事件をニュース番組に売る報道スクープパパラッチ、フリーカメラマンですね。そういう仕事でがんばる話です。はたらくおじさん〜報道スクープパパラッチ編ですね。スクープを追う人もパパラッチでいいんですか。
もう一つ、そういう職業の中でいろいろ起こる事件映画っていうくくりで想像していたんですがそれも違って、これはジェイク・ギレンホール演じるルイス・ブルームという男そのものを描く映画でした。この男の成長・成功物語でもあります。
ルイスは最初からカメラマンなのではなく、こそ泥なんですね。頭が良くネットでよく勉強するから何でも知っていて饒舌、でも学歴も職歴も大したことなく怠け者でプライド高く一発なんか当てたいなーおれならできるはずだ、と夢見がちな、つまり今時のネットに張り付いている頭でっかちの怠け者たちと同じような性格の男という設定です。これがまずとても今風です。
どこかですでに書きましたが今時の若い子は覚醒ものが大好きだそうです。つまり、自分には特別な力が最初から宿っていて開花していないだけ、何かの拍子にパッと覚醒してスーパーサイヤ人になるという、そういう夢物語ですね、これに惹かれるといいます。昔の若者は馬鹿正直に努力と根性が大好きで血のにじむような努力の末にスーパーサイヤ人になるという夢物語が好きでした。どっちも同じくらい間抜けな夢物語ですがどちらにせよ最終的にスーパーサイヤ人です。
「ナイトクローラー」も実はその手の映画でした。ただしパッと才能が覚醒するという単純なものには見えないような巧みなストーリーテリングになっています。若干の覚醒に加えて努力と根性の要素も外さないという点が今の時代むしろちょっと斬新に感じたりします。
ただし今時のネットに群がる怠け者たちとルイスという男の決定的な違いは行動力とそのスピードですね。
彼は努力してがんばりますが基本最初から才能の塊です。才能がある上にネットで猛勉強もしますから最強です。そして行動力は格別です。伊達にこそ泥をやっていたわけではありませんね。図々しさと行動力、これに才能と勉強と饒舌が加わり最強の職業人となります。
こそ泥やっているときにたまたま出会った事故現場を撮影する男たち。彼らがセンセーショナルな現場を撮影しテレビ局に売るのを見て知って「よしこれだ。これやるぞ」とがんばります。才能ある男ですからめきめき頭角を現します。
やってることはエグいですが成功物語には違いありません。見ていてもスカッとします。普通の成功物語では途中あからさまな危機というものがやってきますね。単純なものだと敵という存在が、もうちょっと凝ったものだと良心や葛藤、あるいは存在自体の危機など、そういう物語上の危機シーンがあってそれを乗り越えるみたいなのが定番です。
「ナイトクローラー」でも危機的シーンはありますが、さほど危機感はありません。さっくり乗り越えます。危機感をことさら盛り上げないそのストーリーテリングは大いに気に入った点です。ストーリー上のお約束なんぞお構いなしというこの映画のスタンスと主人公ルイスの気質がまたぴったりフィットのはまり具合で、こういうスマートなのはいいですね。
見どころはジェイク・ギレンホールに尽きます。ぎょろりとした目つき、自信たっぷりの饒舌、揺るがないスタンス、実にスマート。洒落た映画です。一線を踏み越える交通事故の撮影シーンあたりからの急加速な展開、無慈悲で冷酷な職業マシーンと化すその姿は変身しないスーパーマンの如しです。饒舌部分の脚本も実に見事。
見ているあいだはほんとにもうドキドキしっぱなしで息もつかせぬ展開に大いに楽しめます。
気に入ったシーンは最後のほうの助手との会話です。散々こき使ったあげく昇進を伝えます。無邪気に喜ぶ哀れな助手。
「昇給も?」
「もちろんだ」
「金額は・・」
「お前が決めていい。いくらだ」ここですね。お前が決めろと。貧乏人の弱点も操りかたも全部熟知しております。
誰にも賛同されないことを覚悟しておまけみたいに書きますが、ジェイク・ギレンホールを見るとジム・キャリーを思い出します。ちょっとどこか似てません?似てませんか。似てると思ってるの自分だけなのかなー。