「変態村」という邦題は確かに目を引きますが、あまりにもB級臭く感じるし、その手のマニアだけが手に取ればいいという安直な姿勢が厭味です。でもそのおかげで私のようなその手のマニアが手に取ったのもまた事実(笑)複雑です。原題はCalvaire、ゴルゴダの丘という意味らしいです。
この作品はDVDで知りましたが、監督インタビューが入っていて、いかにも頭でっかちでアート思考の映画マニアだということがわかります。突き詰めたアート思考はB級ゾンビ映画に、不条理はナンセンスギャグに、サルトルの「嘔吐」は下品なゲロシーンに通じるところがあり、当然気持ちはよく伝わります。しかし言いたいことありすぎで喋りすぎですよ、監督。
老人ホームでの慰問シーン、冒頭から引き込まれます。まあ確かに「変態村」と名付けたくなるかもしれない変態性を感じます。この、登場人物全員が怪しい感じはデヴィッド・リンチファンならよくわかるかも。そしてダリオ・アルジェントファンなら「サスペリア2」を彷彿とさせるでしょう。「リキッド・スカイ」みたいな80年代インディーズ映画も思い出すかもしれません。ちょっと褒めすぎました。話半分に読んでください。
まあ何しろちょっと怪しい主人公が怪しい歌を披露、老人も喜ぶ、ホームの人も喜ぶ、と、こういうシーンから始まって、次の目的地へ車で向かいます。
そして、どこかのド田舎で宿を取ります。怪しげな気違い、怪しげな宿の主人。イライラじゅくじゅくする展開となります。
ここでもまた、田舎の宿の撮り方や主人との会話シーンにこだわりを感じます。ヨーロッパ映画の良いテイストがたっぷり含まれています。もうこのままの感じで展開していってもらっても良いと思うほどです。
そんなこんなで時にはB級テイストも織り交ぜながら、「変態村」の湿った圧迫感が延々と続きます。
結論としては、大変よい映画でした。そして、嫌いな人は嫌うであろうアート臭さもたっぷり、加えてB級テイスト、その混ざり具合がまさにハイセンス。チルドレンクーデターのアートがさぼてん坊やみたいなものです。「関係や繋がりが意味不明」とさんざん雑誌でこき下ろされましたがなぜこのテイストがわからんのだ(と、だれにも判らぬ例えで恐縮です)
注目のひとつはエンドクレジットのデザイン。このアートへのこだわりがインテリ監督の全てです。
昔よく観に行っていたダダやシュールレアリズム映画、アングラ系映画の上映会を思い出して個人的にですがアートノスタルジーが刺激されました。
DVDには監督のインタビューに加えて「ワンダフル・ラブ」というワンダホーなタイトルの短編映画がひとつ入っています。
はっきり言ってこちらも大変おもしろい。これはいい!本編よりいいかも。
2004年・第57回カンヌ国際映画祭批評家週間正式出品。2005年・アムステルダム・ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。同年、ジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭審査員最優秀賞、国際批評家賞、プレミア観客賞受賞(wiki記述より)
2009.09.23
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