ドイツ製サスペンスで、広報でも最初からどんでん返しを煽りまくってます。「あなたが目にしたものは果たして真実か」とか「100%見破れない!」だとか、あのなー、そういうのを煽ったらいけませんよ。たとえそういう系であっても、それ言っちゃ面白さ半減、そういう目でだけ見てしまい肝心の本編を楽しめません。意外な結末がある前提で観るのと、普通に楽しんで観てたら驚愕の結末だった、ってのと、どっちが好印象を残しますか、と。
まずは「天才ハッカー集団」なる設定ですが、これに乗り切れません。大体の映画でチャットとかハッカーとかが出てきたら「あーあ」ってなります。この系統ですんごく面白いのってあるんでしょうか?ってほどに、わりとがっかり感あります。
この映画でも、ハッカー集団とかピエロのマスクとか調子に乗る若者たちとか、ほんと気恥ずかしくなるネタの宝庫でして、おじさんちょっと「しっぱいしたかな」とか思ってました。
そうそう、最初に言っときますけどこの映画はわりと面白いですよ。乗り切れないところも多くありましたが、最終的には面白いです。悪くありません。悪くはありませんし、面白いです。あかん、しつこく言えば言うほど気に入らない感が剥き出しに・・・
気を取り直して驚愕の結末についてです。100%だまされたかどうか自問しますと、何にどう騙されたのかよくわからないけど多分騙されましたよ。かな?というか、どうでもいいです。どんでん返しは面白いですよ。面白いけど、どんでんの一歩手前のところ、そのまた一歩手前のところ、そういうところでの驚愕が特になく、ふーんと思ってたらそれを裏切ったりして、だからまたふーんと、そんなふうに思いました。
つまり、映画部のおじさんを本当に驚愕させようと思ったら驚愕する動機が必要なわけですが、ストーリー的にはそれがあっても内容的にやや希薄です。
例えば、うさぎと亀が競争しました。うさぎだと思ってたら亀でした!って言うと「へー。うさぎと思ったら亀だったのか!」てなりますけど、これが、AとBがありましたがAと見えて実はBでした。って話されると「うん。それが何か?」ってなります。
ネタバレ避けるための言いかたが回りくどくてすいません、端的に言うと、ハッカー集団の4人組がいますね、この四人組をもっと面白くもっと個性的にもっと感情移入させてくれるほどに魅力的に描いてくれていれば十分驚愕できたと思います。
そこんところが惜しいのでした。演出の中二臭さも原因の一つです。そういう撮り方もういいから、とかやや思ってしまいました。
ということで、この映画は若年層向けの映画です。それを踏まえてあげることが第一歩、そうでないといい大人は乗り切れません。
若年層向けの映画と合点すると、そうすると面白い映画だとわかります。あっと驚く結末も好意的に。「ユージュアル・サスペクツ」を踏まえている人向けに、もう一ひねり入れてやれっていう楽しげな作り手の思惑も伝わります。
トリッキーなストーリーに心地よく騙されるのは楽しいことです。それに関しては良くできていますよ。
さてこの映画の監督ですが、こうして書いていて初めて気づきましたが「23年の沈黙」のバラン・ボー・オダー監督でした。おおっ。「23年の沈黙」とはまた作風をころっと変えましたね。と、思ってよーく思い出してみたら、何となく共通点もあり、同じ監督の作品ということで合点もいきました。どうやらこの監督の演出法が好みにちょい合わないようです。
ただ、この監督は若年層向け作品としてちゃんと分かって作ってるという感じもします。目的があり目的に沿った演出をしているにすぎません。もしかしたら本人もゲーム世代で中二的なものが好きなのかもしれませんがどっちでもいいことです。だからおじさんが「おじさん好みではない」というのはとてもカッコ悪いことです。しかも面白くないわけでもないのに文句言ってはいけません。はい。すいません。
てな感じで、トリッキー系のハッカー青春白書「ピエロがお前を嘲笑う」でした。乗り切れない部分もありますけど面白いですよ。