2016年新年早々どえげつない映画ばかり観ておりますので元旦二日目は力の抜けた一本を気軽に観ましょうってことで「コード60 老女連続殺人事件」を観てみます。あれ?元旦っていつだっけ。
老女連続殺人という言葉からたっぷりと面白そうなネタの妄想が膨らみまして、どちらかというとギャグ系ぶっ飛びスリラーかと思い込んでいたわけですよ。果たしてこの言葉から想起される妄想ほどに面白い中身が詰まっているのかどうか、そこのところが気になる一品でした。でもね、全然違いました。ギャグでもコメディ系でもありません。いたって真面目なスリラーでした。
実はこれ、劇場映画ではなくテレビ映画なのでして、真面目な上にお手軽、お茶の間サスペンス劇場という感じですね、思惑とは違いましたが別の意味で手軽な作品で、おせち料理とお酒の合間に観るのに丁度良い塩梅でございます。
とはいえ、お茶の間サスペンスなどと小馬鹿にするような出来栄えではなくて、そこそこよくできていますよ。レベルの高いテレビ映画だと思います。
お話はややお年を召した女性が連続して殺されるという、バルセロナで起きた実際の事件をモチーフにした作品だそうです。
事件を追う女刑事と上司、犯人と被害者たち、人と人の物語、刑事たちの諸事情や、社会的弱者というか社会の中で目立たない場所にいる庶民の悲哀など、そういった複雑な面を描きつつドラマが進行します。
そうそう、まさにドラマっぽい進行です。これはあれです、刑事コロンボとかそういう系です。犯人探しのミステリー要素は全くなくて、話の途中から犯人もドラマ構成員として出てきて、追う側と追われる側を並列に描くんですね。自ずと、ドラマ性が強調されることになります。
という感じで、良いシーンもありますし、哀しいところもあったりしますし、テレビ映画と舐めていてはいけません。
監督はカルロス・マルティン・フェレーラという人で、この人はぜんぜん知りません。2011年の「コード60」以降は日本で紹介された作品が見当たりません。それより、他のスタッフに注目の人たちが。
「ロスト・ボディ」の監督でもあるオリオル・パウロ、ララ・センディムが脚本を、「フリア よみがえり少女」の監督で「悲しみのミルク」製作もしていたアントニオ・チャバリアスが製作に名を連ねております。なるほど、出来の良さも伺えるというものですね。
女刑事をいい感じで演じたアンナ・アレンが気になるところです。ですが他の出演作を知りません。というかありません。IMDbによるとテレビの女優さんのようですね。劇場映画とは歴然とした差があるんでしょうか、厳しい世界ですから。
「老女連続殺人事件」という言葉に触れた時、いろいろと面白ネタの妄想が膨らんだと最初に書きましたが、それについて蛇足を少しばかり。
例えばですね、普通のホラー系スリラーの場合だと、うら若き乙女が狙われて絶叫したりしてこれがエロティックな喜びを観客に与えたりするわけですね、これをそっくりそのまま老女でやってみたらどうなるのか、そんな風にパロ風味の妄想をしていました。
ナイトクラブで踊ったり、ナンパされて貞操の危機がやってきたり、強気な女友達が逞しく振舞ったり、か弱い老婆が電鋸で反撃したり、若い子がやる定番シーンを老婆でやり遂げるという、もしそんな映画だったらたまらなく面白いと思いませんか。ワクワクしますね。しませんか。そうですか。いいですけど。