「マン・ハンティング」って、なんだかネタバレタイトルですよ。原題は「山の王」です。「山の王」のほうがかっこいいタイトルと思いません?
ということでタイトルでバラしてしまっている通り「実は人間狩りでした!」っていう作品です。途中までは理不尽に狙われる恐怖を描き、謎を感じさせる作りになっていて「ゲーム感覚の人間狩り」という答えが出るのは後のほうなのに、デリカシーがありませんですね。ただ、じゃあ人間狩りをやってる犯人は誰なんだというあたりの意外性は存分に楽しめるでしょう。
2007年のこの映画、今ごろ観たのは行きがかり上のことでした。
どういう行きがかりかというと「オープン・ウォーター 第3の恐怖」と「世界で一番醜い女」からの流れです。ただ単にスタッフクレジットを眺めていて共通の人がいました、みたいな話なんですけど、そんなわけで「NAKED」の感想文はこれらの続きとなります。
見終わった感想ですが、序盤の雰囲気よろしいです。脇役もとてもいい感じです。雰囲気も良くて全体的にはいい感じ。ただ最後はいただけません。最後の展開には文句あります。そんなことより大収穫がありました。女優です。
以上がこの感想文の概要です。ではひとつずつ追っていきましょう。
序盤は主人公のキムがガソリンスタンドのコンビニに立ち寄って電話するシーンです。わけありそうな感じです。電話しながら、可愛子ちゃんが万引きしているのを目撃、それが元でいいことになります。いいことになりますが財布を取られました。がーん。
てな感じで掴みはとてもいいです。いい雰囲気です。面白そうな予感がビシビシと。
財布取られてどうしようあの女が怪しいぞどっち行きやがった追いついてやると思いながら運転していますとどこからか銃撃されて怪我します。何だ何だ何事だと大慌て。この展開もいいです。びっくりします。何が起きたのか、キムにもわかりませんが観ているこちらもわかりません(嘘です。マン・ハンティングだから人間狩りだろうと邦題でネタバレ済みです)
そんなこんなしていると、さきほどの万引き美女と再会します。「財布返せこら」「知らないってば」てなやりとりをしつつ、つまり信頼関係のない危うい関係のまま、話が進むんです。
さらに二人組の保安官が出てきます。キムは被害者なのにまるで犯人扱い。こうした危うい展開はおもしろいですよね。誰もが怪しい、誰もが疑わしい、誰も信用できない、っていう王道です。でもとてもいい。
てなわけでして、保安官もふくめて、ちょっとした意外な展開をしつつ森の狙撃事件が進みます。序盤の緊張感と面白さをずっと継続するわけではありませんが、悪くないですよ。
特に保安官の扱いなんかはすばらしいです。とてもいいキャラで、気に入っているところのひとつです。
映画の後半、狙撃の犯人がわかります。ここはやっぱり衝撃的なシーンです。ふたつの衝撃を同時に持ってきて、脚本家が特に力を入れた部分に違いありません。印象的な台詞もありました。のんきに観ていたこちらも「げっ」と。この大事なシーンを演出的編集的に最大限に生かすことができていれば、この映画は傑作の認定していたかもしれません。
ラストのシークエンスの一部は、せっかくの出来映えを台無しにしたとさえ私は思っています。犯人が判明したあと、ラストまでの間にアクション映画的というかゲーム的なシークエンスを挟むんですよ。今まで描いてきた主人公の性格もまるで無視、丁寧に作ってきたドラマが違う映画に乗っ取られたかのような単なる見せ場的なものになってですね、私は気に入りません。最後の最後はまた元のテイストに少し戻りますから、クライマックスのアクションシーンはサービスのつもりだったんでしょうか。あれもやりたいこれもやりたいでしょうか。
はい。というわけで注目は万引き美女です。誰かというとマリア・バルベルデです。MovieBooでは「バスルーム 裸の2日間」がやたらと検索ヒットして読まれております。そのバスルームで裸の女学生を演じた女優さんですよ。やったーやったー。
まさかこんな映画に出てるとは思もしていなかったので、これは嬉しい出来事でした。
監督や脚本の人たちについてです。
監督のゴンサーロ・ロペス=ガイェゴは「オープンウォーター第三の恐怖」、脚本のハビエル・グヨンは「シャッター ラビリンス」や怪作「複製された男」の人です。脚本家は力のある人だと思います。
ゴンサーロ・ロペス=ガイェゴ監督ですが、2013年に「オープン・グレイヴ」という映画をアメリカ資本で作っております。これには「第9地区」のシャルト・コプリーが出演してるんですね。割とがんばってます。