「ネスト」という同名邦題の映画もありましたが、こちら2014年のスペイン/フランス映画「Musarañas」の「ネスト」です。
奇才アレックス・デ・ラ・イグレシアによる製作です。これは観ないではおれませんね。
ところでMusarañasって何でしょう。トガリネズミと出ますね。トガリネズミって何ですか。トガリネズミはネズミではなくモグラやハリネズミに近い夜行性の小型動物だそうです。でも何かしっくりきませんね。「Musaraña」に対して英語では「shrew」とも出ました。わお。google翻訳では「首を絞める」と出ましたが、辞書的には「口やかましい女、ガミガミ女、トガリネズミ」ということで、多分これですね。
[追記]…と調べていたら映画祭の詳細な記事があったのでサイドにリンク貼っておきました
姉と妹が暮らしています。訳ありな家族です。どんな訳があるのかは映画の後半でたっぷりと。姉は妹に厳しく、自由を奪っているような感じです。でも親心みたいのが根底にあります。妹はいい子なので言うことをちゃんと聞きますが、さすがに厳しすぎて「ウザいわっ」といつ切れてもおかしくありません。
姉は広場恐怖症で外に出られないんです。ずっと家にこもっています。自分には妹を育てたり家を守ったり責任がいっぱいあるのに妹は自由でそれに不公平感も持っているし嫉妬もあります。姉はやや屈折しております。屈折した人にありがちですがかなり信心深いです。
ある時玄関先に男が倒れていてこれを助けます。献身的に男の面倒を見ますね。姉の恋心に火がつきます。観ているこちらには「ミザリー」を彷彿とさせます。お姉ちゃん、この恋心をきっかけに人として立ち直ってくださいと見ながら願います。ですがこの映画はサイコスリラーですのでそう簡単にはいきません。
これは怖いです。そして見応えたっぷり、おののき、震えます。最後のほうはもうヤケクソみたいになって、何重にも驚きの展開があるし、度が過ぎてきてちょっと笑ってしまうほどですがそれでも怖いです。
この凄い姉を演じた人は「スガラムルディの魔女」でその骸骨的な外観と大きすぎるお目々で強く印象に残ったマカレナ・ゴメスという女優さん。いやあ個性的な人がいるものです。美貌と恐ろしさとサイコっぷりを兼ね備えた素晴らしい人材です。この人を主人公に映画を作りたくなって当然ですね。
姉と妹の家族、過去にいろいろと秘密が隠されている模様で、可哀想な話とセットになっていたりします。このあたりとてもドラマチック。ふいに現れる父親とかほんと最高です。映画的に「ネスト」はとても優れています。
アレックス・デ・ラ・イグレシアは製作ということですが、多分ほとんど全体にこの才人の力が及んでいると思われます。
で、父親役で登場するむさ苦しく怪しい男、これを怪優ルイス・トサルが演じていますね。ルイス・トサルはいつどこに出演しても顔は同じです。でもキャラクターがまったく異なるのですね。見た目そのままであらゆるキャラクターを演じ分けることが出来る実に不思議な俳優です。
スター俳優ウーゴ・シルバも出演していますが、人気スターだからといって良い人の役とは限らないし、映画を観ていて油断出来ない感じが継続し、楽しめます。でもウーゴ・シルバは可哀想でした。それからカロリーナ・バングも出演しております♡
他のイグレシア作品の感想を書く前に放置していた「ネスト」の感想文を書いてしまいましたが、ルイス・トサルプチ特集を開催中なので。もう一本「スリーピング・タイト」ってのもあります。それはまた近々。と、思ってたらいつの間にかスリーピング・タイトを先に書いてました。だんだん自分がやってることを把握しきれなくなってきております。
「ネスト」はトロント国際映画祭、シッチェス・カタロニア国際映画祭で上映され、ゴヤ賞では監督賞をノミネートのみで逃し、メイク・ヘアメイク賞を受賞しました。惜しい。スペイン映画脚本家協会賞にもノミネートされ・・・受賞を逃しました。
ノミネートされるところまでは行き受賞を惜しくも逃すという、なんかこれ、よく分かるような気がします。まさにそんな映画です。
予告編はどうでしょうね。と、チェックしたらこれちょっと見せすぎですね。というか、最後のほうの派手なところだけを編集していて悪意を感じます。内容だけならともかく、ムービーサムネイルがちょっと問題ありすぎたんで一旦貼りましたがやっぱり消しました。そういえば日本版ポスターというかカバーアートも気に入りません。こういうバラし方は品がありません。てなことでドシャメシャの派手な予告編を見たい方はyoutubeのこんな感じのここで存分にどうぞ。
…ここまで書いて、貼っていた日本版カバーアートの画像を本国版と差し替えることにしました。やはりデリカシーのないポスターアートが好きになれませんで(日本版カバーアートはAmazonのDVDで確認できます)。なのでカバーアートがあんなのだからいいかと思って書いたネタが割れる文章も段落ごと消しておきました。
てなわけでルイス・トサルのプチ特集にかこつけて「ネスト」でした。肝心のアレックス・デ・ラ・イグレシアのあの二本をまだ書いていませんでしたので、名前も出たことだしこの後は…
…アレックス・デ・ラ・イグレシアにつづく