まず序盤の「連続ぶち込み展開」には叫び声すら出てしまいます。冒頭こそじと〜っと始まりますが、すぐに場所が移動し、何だろうと思う間もなくがん、がん、がん、とスピーディな掴みの展開が襲いかかり、まだ準備中のこちらは身構える暇もなく完全に思考力を奪われ、豪雨のモーテルに引きずり込まれます。
後はもうエンディングまで息をする間もない展開で、これ何なん。この面白い映画何なん。とあたふたします。
この映画がいったいどういうジャンルに属する映画なのかも途中わからなくなるような展開にこちらのゲシュタルトも完全崩壊。
何がどうなってんのかさっぱりわからぬままに強引に話にのめり込まされ、そこで起きる事件にすーっと入っていけてしまいます。事件?怪現象?ホラー?ミステリー?何でもいい。どんとこいです。
どんと来いの状態のまま、この映画内の常識を疑うことなく話の中身に感情移入したあげく、突き落とされます。このドタバタ騒動自体が叙述トリックの形相を帯びていることを思い知らされます。
これはたいそうおもしろい娯楽ミステリーサスペンスホラースリラーでした。
そして、そういう映画であるからして、他のミステリー映画と同様、一切の情報を得ずに観ていただきたい映画です。誰が主人公かすらわからずに見始めた自分はまったく幸運でした。
そうなんですよ、主人公が誰とか、もうどうでもいいんです。むしろ、誰が主人公かわからぬぐらいのほうが10倍楽しめます。自分はそうでした。
監督は「17歳のカルテ」「ニューヨークの恋人」などを撮ったジェームズ・マンゴールド。「17歳のカルテ」は面白く「ニューヨークの恋人」は大したことないので、先に監督を知っていたら少し穿った見方をしたかもしれません。それも含めて何も知らずに観れてラッキーでした。
ジェームズ・マンゴールド監督はどうやら非常に技術力の高い職人監督っぽいです。技術力がありすぎて逆に普通に見えてしまうという、そんな監督じゃないでしょうか。
「アイデンティティ」の公開時期は、他に「ボーン・アイデンテティ」だの「アイデン&ティティ」だの似たようなタイトルが目立っていたこともあり、全く注目されていなかったというのも悲しいですね。なぬ?注目していなかったのは私だけですか?そうですか。そうかもしれません。今頃見ましたけど面白くてわーわー言うてました。
2006.08.04
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