日本では2010年のしたまちコメディ映画祭で「3バカに乾杯!」のタイトルで上映されたそうです。インドの青春コメディ大作で、本国では歴史的大ヒットしたのだとか。日本でも噂が噂を呼んでたくさんの人が楽しんだのではないでしょうか。
いい加減な人間というのは、あまり知らないことに限って知ったふりをします。例えばインド映画なんか片手で数えるほどしか観たことないような何も知らないやつに限って「インド映画の特徴はね」などと語り出すからタチが悪いのです。
さてところでインド映画というのはね、3時間ぐらいの長い映画が多くて、それは短すぎたら入場料と合わないって思ったりするからだそうなんですね。そして娯楽のすべての要素、笑いと涙と人情と、恋と家族と唄と踊り、風刺と驚きとお約束、美しい景色とノスタルジーと夢と希望、ドタバタとドキドキとハラハラそわそわ、まあ何しろぜんぶ入ってると。ぜんぶ入ってないと損した気分にでもなるのでしょうか。一本観たらお腹いっぱいになるような、そんな作風が強いんだそうです。
タチの悪い人間の知ったかぶりは放っておいて、この「きっと、うまくいく」は青春映画だからして、いろんな青臭い部分もあります。ですが大方の予想通りほんとに高密度に娯楽要素が詰まっていて多少の臭さなどまったく気にならないところまで連れてってくれます。
つまり、とても面白いんです。
面白技術にはいろんな技術があろうかと思います。テンポの良さとか、人間味の表現とか構成力とか、あとほら、伏線とか、いろいろあります。そんでもって、それら面白技術のすべてが詰め込まれています。
映画好きな人っていうのは特に伏線とその回収が好きだったりします。意外な部分が伏線だったりすると喜ぶし、張り方と回収が露骨で下手糞だったら機嫌が悪くなったりします。その部分においても「きっと、うまくいく」は見事です。見事すぎてアホくさいぐらい見事。ご丁寧に全部が全部、きっちり回収してくれますし、そこに嫌味がありません。いや、一部あったとしても数が多すぎて気になりません。
こうした構成力はただ丁寧な作りと言うよりも、とても数学的な美しさを伴っているように感じます。インド人は古代文明のころから数学的にも超絶賢い人たちですからね。
まああまりくどくど言うような映画ではありません。なんせ楽しくて、笑うところは膝を叩いて笑えまして、泣くところはぼぁーっととめどなく泣けます。
娯楽の殿堂ですね。