なんとなく悪い予感のまま見始めたら思った通り、否、思った以上に適当なドラマで、基本はオドレイ・トトゥのアイドル的映画なんですが、感じとしては日本のドラマみたいというかテレビドラマ風の仕上がり。かなりその、良く言えば軽いタッチの映画でした。
冒頭からしばらくは夫との出会いから結婚のシーンです。安いCMみたいな撮り方で、多分これはパロディシーンだろうと思います。ですが笑えません。ちょっと我慢してるとドラマが展開します。
それからいろいろ話が進みます。テキパキ進行していい感じのところもありますが、ちょっと意味不明の出来事があって、それから新たなラブコメ展開となります。さらに我慢して見続けます。
そしてもっと我慢して最後まで見終わって、若干あっけに取られながらもちょっと嬉しくなってきます。なぜかというと、こんな程度の映画でも映画大国フランスで作られているんだという親密感というか安心感みたいなものが得られるわけですね。
決して悪い映画じゃないです。嫌いでもないし、観てられないってわけでもないし、話の流れやテーマ自体はいい感じです。
最大の残念感はスウェーデン人の面白さや人の良さがまったく描かれていないところです。「いい人です」と口で言うだけでいい人である表現がありません。「三枚目で面白い」という役割なのに面白いシーンはありません。説明だけです。
最大に面白かったところは仕事です。職場がたくさん映ります。でも一体全体、何の仕事をしている何の会社なのかさっぱりわかりません。
抽象的にデスクでメモったりパソコン使ったりしているだけです。でもパソコン画面はいつもただデスクトップ画面が映っているだけです。
「三ヶ月にわたるプロジェクト」とか「案件114」とか仕事っぽい言葉が頻繁に出てきます。時にチームで会議もします。でも何をしているのかまったくわかりません。たまに何かをしているかと思ったら書類をめくってサインしているだけです。
そういえば社長が出てきますが、この社長がナタリーの面接をします。つまりこの会社には人事部がありません。ちょっとした中小企業でしょうか。そのわりになにやら立派な会社らしいのです。ストックホルムに支社もあるそうです。
そしてこの社長は社長の机に座っていることだけが仕事です。たまにソファで新聞読んでます。
それから下っ端の女の子社員の誕生パーティを全社を挙げて行ったりします。全社を挙げてもちょっとした会議室程度の広さです。それはともかく、「プロジェクト」とか「案件」とか口で言ってるだけのこの会社は基本仕事をしていません。少なくとも、何系統の何の仕事なのか、観ている人にはまったくわかりません。
あまりにも仕事がわからないので観ていて「そんで、何の仕事やってんねん」と何度も呟いていると、ついにチャンスが訪れます。
設計をやっているというナタリーのお友達がスウェーデン人に訊くのです。「君は、仕事何やってんの?」
「ついに秘密が明かされる時が来たっ」と思わず腰を浮かせます。するとスウェーデン人のその答えは・・・!
ま、それは見てのお楽しみですが、引っ張るような話じゃないのでネタバレします。仕事が何かを答えずに「ナタリーと同じ会社に」と答えるのです。
ずっこけます。結局、彼らが何の仕事をしているかというのは映画を見終わっても解明しませんでした。
この薄っぺらで抽象的な会社の表現は、作った人がまったく仕事をしたことがないということを臭わせます。空想としてのエリート会社の仕事です。
監督と脚本の兄ちゃんたち、あんたらな、もうちょっと社会に出てから映画作った方がええでとか思ってしまいます。
さてこの捻りもコメディもないラブコメ映画、フランスで馬鹿売れした小説の映画化だそうなのです。なんと驚き。
それ聞いて真っ先に「原作者、こんな映画にされて怒ってるやろなー」と思いました。しかし甘かった。
なんと、その原作者本人が監督・脚本をやっているのです。あわわわ。
つまりラブコメ小説が大ヒットして大金を手にして、調子こいて大女優を起用して自ら脚本書いて監督したわけですね。そりゃ本人気持ちええやろなー。
というわけで「ナタリー」でした。何か貶してるみたいですが決して褒めていません。
いや、でもね、あまり貶したくもないのですね、嫌いなわけではないので。単にテレビドラマみたいな中途半端なラブコメってことで、そういうのOKなら別に気になるところはないですよ。
ここまで書いたら、みなさんだんだん観たくなってきたんじゃないですか?なりませんか。そうですか。
恋と幸せがありそれが崩壊して立ち直れなかった女性が新しい恋を見つけて前進します。そのお相手は一見ダサいけど優しいスウェーデン男。優しい彼はナタリーのすべてを受け入れてあげようと決意します。人を見た目で判断するような奴は放っておいて優しいおばあちゃんとスープを飲み、庭で日を浴びます。
こういうストーリー自体はとても素敵です。この骨子は何ら否定するものではありません。
オドレイ・トトゥもいい感じです。彼女のファンにはいいシーンがたくさんあります。
仕事の件や他の演出上の不手際が気になる人にはついていけませんが、気にならない人にとっては悪くないチョイスということが実はさっきわかりました。ですのでちょっと付け足しておきました。
いやあ、嫌いな映画ならともかく、安易に貶すってのは気分も良くないし誰のためにもなりませんねえ。
上手な監督が作ったら面白くできたと思います(まだ言うか)