まあまあ退屈な映画です。というのも、青年ひとりが屋敷を探索するだけの話で、しかもホラーっぽくゆっくり動きます。気を持たせながらじわーっとしてじとーっとした動きをカメラが追うのですね。部屋の小物を眺めたり出入り口を注視したりするシーンがほとんどを占めています。
映画を見終わって、なんだこりゃ変な映画と思いながら公式ペラを見てみたら「監督の実体験に基づく」なんて書いてありまして、なんと実話ベース。しかし話というほど話はありません。
それで思い返して、どのような実話だったと申しますと、こうです。
以下、この映画の全てのストーリーです。ネタバレですのでご注意を。
まず青年が屋敷を訪れます。
それから家のあちこちを眺めます。
それからフライパンで何か炒めものを作って食べます。
そのあとジューサーミキサーで生ジュースを作って飲みます。
あと薬を飲んだりもします。
何人かに電話します。
遺されたビデオを見ます。
怖い想像をしたり悪夢を見たりお母さんのことを思い出したりします。
その他、薬を飲んだりたばこを吸ったりもします。
寝て起きて「よし、やっぱりこの屋敷はすべて売却してしまおう」と決意します。
終わり。
なるほど実話っぽい。
なかなか難易度の高い映画です。
(ほぼ)たったひとりの出演者は演技あまり上手くないし、舐め回すように小物を撮りますがどれもなんか安っぽいし、同じようなカメラの動きで同じような思わせぶりなシーンばかり続くし、さすがにちょっと困難です。
出来映え的にはしっかりした映画で稚拙なところや雑さはありません。インディーズ臭さもありません。すごくちゃんと作られています。でもそれがちょっぴり仇になって、むしろインディーズ臭く荒々しい作風だったら好みだったかもしれません。
謎の女性アンナが面白かったです。
主人公が弱り切っていたり怖かったりしたら彼女に電話します。
アンナはとても面倒臭そうに受け答えしますが、まるで実在の人ではないみたいに優しく包み込むようなアドバイスをします。
彼女は恋人でしょうか、かかりつけの精神分析医でしょうか。実に不思議な存在です。
それから、母親役でちょっとだけ出てるヴァネッサ・レッドグレーヴが貴重すぎます。出てくるのはわずかですが、ナレーションはずっと読んでますか?
全体を通してみると、新興宗教に嵌まった母親に対する愛憎葛藤の主人公青年のうじうじ物語です。
アンナの存在もある意味母親のような感じだったので、この映画そのものが監督のマザコン的物語と言えるかもしれません。物語と言っても、ストーリーは炒め物を作って食べて怖い想像したってくらいですが。
監督ロドリゴ・グディーニョってどんな人かと思ったら、なかなか味わい深い風貌の青年ですね。もちろん今後も応援します。