チリです。「アフターショック」のビフォーつまり序盤はチリにやってきたアメリカ人と地元のガイド、ナンパした女の子たちとの観光映画となっております。
この序盤がもうなんかあほみたいです。だらだらと観光したりクラブで遊んだりするシーンが続きます。でもこのあほみたいな感じがとても好きです。
そんでもってチリに行きたくなります。街並みも良い感じです。ちゃんと仕事をしないケーブルカーのおじさんもいいですね。
チリ観光映画が進みつつ登場人物の個性もちょっとずつ出てきます。これがまたなかなかよいです。離婚して娘だけが可愛いグリンゴ(イーライ・ロス)、彼女に浮気されっぱなしのアリエル、父親が大金持ちのポヨです。
地元のへんてこりんなスターもなかなかいいです。
女の子たちの中ではロシアのモデルとかバーカウンターのカルメンもいいですね。中心人物の腹違い姉妹もまあまあいい感じです。
登場人物たちに関してはとてもよく描けています。
なかなか地震が起きずに観光ドラマが続きまして、このだらだら感も好みです。むしろ序盤こそが面白いです。
そして地震が来て、その後は阿鼻叫喚の酷い映画になります。
この映画、全体的にはまるでだらしない映画で、あまり褒められた出来ではありません。ですが細部がとてもいいです。小ネタに満ちています。
その小ネタは基本的に映画に慣れた人をズッコケさせるタイプのネタで、見慣れたこの手の映画の定石を小気味よく裏切ることだけを目的にしているかのようです。つまり、若干マニア受けというか、映画オタク向けという、まことに小さな映画であります。
死ぬ順序や死に様に小さなネタを仕込み、そういうのに気づく映画ファンがにんまりします。
例えば掃除のおばちゃんに親切にしたおかげで秘密の抜け道を教えられますが、そのおばちゃんの伏線とその回収があまりにも短時間で完結するのであっけに取られます。
例えば手が千切れた彼は「おれの手を!」と千切れた手のことばかり気にしています。女性が手を見つけて、ちゃんとバッグに仕舞うシーンの丁寧さに痺れます。
また例えば詳しく言えませんがある男がある場所をちらりと見てしまうシーンがあります。このチラリが撮影現場で馬鹿受けしただろうなと、スタッフ気分で笑えます。
他にも細かすぎる小さなネタが全編節々に散りばめられていて相当楽しめます。
しかしそれだけです。小ネタが気に入らない人にとってはくだらないだけの映画でしょう。肝心の全体的なストーリーもいい加減ですからね。
最後にはもっとぶっ飛んだ展開やスカッとするドタバタ劇を期待していましたがそういうのも特になく、見終わるとあまりの地味さに残念感が漂います。
地震後の壊れた都市のセットなど、妙に金がかかっていそうで、そういう部分が仇になったんではないかと思いまして、監督ニコラス・ロペスの面白そうな経歴を見るにつけ、もっと身の丈の会話劇や小ネタが生きるタイプの作品を観てみたいなと思いました。