怪しげな降霊術の会に立ち会ってインチキを暴き、それで会の皆に嫌われる主人公女性フローレンス(レベッカ・ホール)から映画は始まります。
時代は20年代で、自立した女性であるというだけで煙たがられたりしています。幽霊や心霊現象などインチキばかりであると強気であり、そのため迷信好きなみなさんにもたいそう嫌われています。おうちでも心配されています。そういう女性が主人公でして、でも案の定ちょっと弱気なところもあって、最初からそういう部分を隠すことなく表現します。
こういう設定、最近観た映画でありましたね。そうですね「レッドライト」の女性教授マーガレットと似たタイプです。物語的に、若干ジェンダー方面のあれこれを感じさせる自立した女性で、しかし強気は弱気の裏返しであるという部分も持っていて、そういう彼女がインチキ心霊現象のペテンを暴く仕事をしているというのが同じです。
でもその後の展開は「レッドライト」とはまったく異なります。
こちら「アウェイクニング」は少年の幽霊が出るという寄宿舎に出向き、由緒正しきゴシックホラーのお話へと進みます。
少年の幽霊とは何なのか、幽霊なのか、犯罪スリラーなのか、何なのか、ゴシックホラーしつつもミステリー進行です。謎が謎を呼び、名探偵フローレンスの調査が進行しオカルト現象も出現します。
で、名探偵の調査でサイコスリラー事件簿として収束するかと思いきや、そうでもなかったりして、わりと予想外の方面へも話は突き進みます。
ゴシックホラーオカルトミステリーサイコスリラークライムジェンダーちびっ子サスペンスです。これはなかなか楽しめましたよ。面白かったです。
タイトルだけ見ると若年層向けのゲーム的なお話かなと思いますが、比較的ちゃんと作られています。ずっしり大人文学系ではもちろんありませんが、子供だまし系の娯楽スリラーと切り捨てるほど簡易な作りでもないし、普通にちょうどよくて、とてもいいシーンもあります。いい出来だと思います。
「ヴェラ・ドレイク」という素晴らしい映画のイメルダ・スタウントンが寄宿学校の寮母の役で登場します。ただたんに脇役として登場するには演技も上手すぎますし存在感ありすぎます。だから単なる脇役なわけありませんよね。…てな不純な見方はいけません。
いくつか、とてもいいなと思ったところがあります。最初のほうから登場する気のやさしい少年がいまして、この少年の知性的で賢いふるまいにぐっときます。
ある程度ストーリーの進行に合わせて「真相はこうかな」といろいろ思わせてくれたり、後半になってからは「きっとこうなるだろうな、つぎはこう来るだろうな」と思わせてくれてそれを衝撃的に裏切ったりしてくれます。あるところでは定番通り、あるところでは心地よく裏切る、なかなか見せてくれます。
演出は特別すごいわけでもないけど軽薄な感じはありません。どっちかというといい感じではないでしょうか。落ち着きもあります。監督はテレビの仕事などをしてきた人なのでテレビドラマ的な見やすさがベースにあります。
ということで、いろいろ面白い展開をするのでネタバレはいけません。ですのでくどくど言いません。
感想文を書くに当たって、一瞬「はて。この映画、何だっけ」と完全に忘れていましたが、すぐに思い出しました。くどくど書くほど覚えていないのが真相ですけど、でも思い出すほどに印象はいいです。