ぶっ飛び「REC」でうっきーっって喜んだのももう何年か前の出来事になってしまいました。「REC」で初めて知ったジャウマ・バラゲロ監督は長編デビュー作「ネイムレス」でとっくに話題の監督で、本作「ダークネス」ではアメリカ資本も入りアンナ・パキンやレナ・オリンをキャストに迎えてのちょっとしたゴージャスな映画を作るに至っていたお人だったんでありますね。
そういうことも全然知らずに見た「ダークネス」、お話はホラーでミステリーです。怖いことがあって、その怖さの原因を探るっていうそういうオーソドックスです。
スペイン郊外のお家に引っ越してきた一家。父ちゃん母ちゃん娘に弟です。この地は父ちゃんが育った田舎で、近くにはお医者のおじいちゃんもいます。
まずお家に怖いことが起き始めます。
おびえる弟震える父、がんばる娘が謎を解く、お家が秘めた暗い過去、子供の失踪、欠ける月。来年の今月今夜のこの月を、40年後の今月今夜のこの月を、皆既日食で曇らして見せようぞ。
あれ?なんか変なのが混ざりましたが、とにかく娘が怖い現象の謎を突き止めていくにあたって、家の秘密や過去の怖い事件が絡んできてホラーミステリーの面白さが楽しめます。
「ダークネス」という名のとおり、暗闇というものを上手に生かした個性的な映像も交えて、斬新さや派手さこそありませんが、きっちりした作りの良さを感じます。
ジャウマ・バラゲロの基本的な技術力の高さを見て取ることが出来るでしょう。
スパニッシュホラーの特徴とも言える「いろんな過去作要素を詰め込むバラエティ感」っていうのもあって、その詰め込みっぷりもいい感じです。醒めるぎりぎりでセーブした感じです。詰め込み系は前作「ネイムレス」とも後作「機械じかけの小児病棟」とも近い感じで、そういうのを経て「REC」が作られたことを思うと感無量です。いや感無量にならなくてもいいんですが。
なんといいますか、言い方が難しいのですが、実際にはたいした映画ではないかもしれません。いわゆる他の名作級のホラーミステリーと肩を並べるということはないのですが、でもかといって駄作でもなければ印象に全く残らないということもなく、普通に良作です。今このように、ずっと前に観たにもかかわらず思い出して感想文が書けたりします。
ホラーというのは、乱暴で荒削りで実験的で攻撃的である意味素人臭いような、あるいは高度で文芸的で芸術作品並みの作りをした、そういう作品が面白かったりします。ちゃんとした資本でちゃんとした監督でちゃんとした娯楽作品で面白いホラーなんて滅多にありません。むしろ「ちゃんとした」作りが仇になったりもします。怖さを削ぐしリアリティが欠落するからです。子供だましにも見えます。
まったく逆に、基本的に「ちゃんとした」作風しか受け付けないお客さんもいます。インディーズみたいな出来映えを毛嫌いするそういう人が見たら、荒削りで乱暴なホラーの傑作はただのインディーズ臭い変な映画としか思えないようです。
で、「ダークネス」は「その中間で、ややちゃんとした寄り」ですから、どちらの好みの層からも、ぼろくそに貶されることもないですが特に絶賛されたりもしないんですねえ。
と、書きながらどうも話のオチがつけにくいし、何かしっくりこないなあと思っていたら、それってホラーに限った話じゃないってことに気づきまして、この話は取り消すでもなく取り消します。
というわけで主人公のお嬢さんアンナ・パキンはいい感じだし、弟くんもいい。おじいちゃんの役割がちょっと惜しいし、謎解きが急すぎたりもしますがご愛敬。映像もスタイリッシュで、闇に関する暗い画面もいい感じです。
そういえば、この映画は監督がまずアイデア部分だけのプロモーションフィルムを作って、その予告編みたいな映像を引っさげ世界に営業、資金を得てからプロモフィルムに合わせて脚本を作って仕上げたらしいです(記憶違いでなければ)
「世界に売ってやるぜ。中身はまだ決めてないけど」っていうその根性は素晴らしいですね。
私も仕事に関して昔は「〜は出来ますか」と訊かれたときに「何それ?」と思いつつ「出来ます!」と答えてから必死こいて勉強してなんとかしてきたものです。詐欺師みたいですがその勢いが伸びに力を与えますし必要な若さというものでありましょう。
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