日本から逃れてロサンゼルスにやってきたやくざの組長山本(ビートたけし)が腹違いの弟を訪ね転がり込むところからお話は始まります。ヤクの売人である弟とその仲間たちが絡んできて勢力を地道に拡大、現地マフィアとの抗争にまで発展していく任侠バイオレンス作品。
「ソナチネ」をより洗練させて作り直したような作品に感じます。ロサンゼルスを舞台にすることによる気後れ感もなく、より娯楽風味、より任侠風味、そして「兄弟」というタイトルにもなっている人情風味も加えました。やくざが無邪気に遊ぶシーンも「ソナチネ」よりさらに無邪気に、より明確に撮ってます。
全体にしゃきっとした映画に仕上がっており、文芸映画色を廃してストーリーテリングに徹した娯楽作品としてとても完成度が高いです。バイオレンス系の北野作品の中では最終的な完成形ではないかとすら思えます。
もし「BROTHER」を貶すとすれば、「ソナチネ」の娯楽版焼き直しじゃん。ということになりそうですが、個人的にはまさにそれこそが「BROTHER」のいいところだと思っていたりします。
すごく褒めて言えば、タランティーノやコーエン兄弟の映画のようです。しゃきしゃきと展開し、おかしな人たちが動き回り、物語の流れそのものが主人公のような、そんなイメージです。クールな進行の中にちりばめる人情風味の妙技が、本来の任侠ものから脱皮して新しい魅力になっているとすら感じます。
とにかくですね、いろんなことを経た最後、映画のラストシーンなんですが、私はこれに完全にやられました。
細かく見ればそんなに手放しで絶賛するような映画でもないんですが、ラストシーンの素晴らしさは格別です。
物語の最後としてもいいし、撮り方もいいし、ちょっと長めの独り言が洒落ているし味わいを持っているし、一気に感情の逆流が起きます。ラストシーンだけはまじ絶賛です。あのシーンがあることで「BROTHER」は3段階くらいレベルアップして名作映画の仲間入りをしました(当社比)