コリン

COLIN
ボランティアによるスタッフとキャストで作り上げた自主製作ゾンビ映画。
コリン

学生や若い人たちがわいわい集まって自主映画を作る時、最も作りやすいのがゾンビ映画です。
みんなゾンビが大好き。出演者も嬉々としてゾンビを演じます。判りやすいし簡単だし楽しいし、ゾンビ映画じゃなければ無償のエキストラを集めるのも大変な筈です。

それほどみんな大好きなゾンビですが、数多ある自主ゾンビのほとんどがおちゃらけとギャグに逃げます。ゾンビ映画への敬愛や出来映えの稚拙さ、安直な製作への気恥ずかしさのためでしょう。

この「コリン」は照れることなく、大いに真面目にゾンビ映画を撮り上げました。

真面目に作ったのはいいんですが、やはりそうするとゾンビ映画を自主製作する安直さが露呈します。
つまり、先人達の作り上げたアイデアをただ真似るだけの「ゾンビ好きなので撮っちゃいました」感以上の出来映えにならないんですねえ。

ちょっと前に同じ低予算の自主映画「パラノーマル・アクティビティ」が話題になりヒットしましたが、はっきりいうと「パラノーマル・アクティビティ」の完成度の高さを痛感します。
こちら「コリン」は明確にアマチュアの自主映画のレベルです。
作品は正直言って面白くないし退屈だしワンアイデアの短編ネタをただ既製のゾンビシーンで繋いで引き延ばしただけの代物です。
使ったカメラのせいなのか、すべて望遠のアップシーンばかりで画面が常に拡大表示、大きなスクリーンに耐えられる映像ではありません。映画館やプロジェクターでは視界の悪さのために酔います。
この映画の適正サイズは13インチのパソコンモニターかあるいはiPhoneや携帯サイズでしょう。
グリーナウェイ先生が皮肉を込めて語ったように「これからの映画は携帯サイズでチョロ見するもんだ」を体現する出来映えとなっています。

とまあ言い出したらきりがないですが、これはそういった土台で批判したり語るべき映画ではなく、自主製作映画への監督の熱意を楽しむ作品です。

監督は運送会社のアルバイトをしながら18ヶ月間かかってこの長編映画を完成させました。
この熱意、この情熱、これこそが「コリン」の価値です。途中でくじけることなく、仕事の休みを利用してコツコツと、取り憑かれたように製作したに違いありません。
この映画制作への熱意こそ何ものにも替えがたい価値です。
いいんです、借り物ばかりの退屈なシーンの連続でも何でも。

監督はインタビューでこう語っています。「ぼくの映画を見て『自分も何か作りたい』と思ってもらえることが最高に嬉しいことだ」
熱意の持続によりこの監督は必ずや成長するはずです。

この映画を見て思わず糞味噌に貶してしまいそうになっている自主映画制作をやっているあなた、ちょっと待って監督の情熱について多少の思いを巡らしましょう。「他人に文句言ってないで、もっと面白い映画を作ってやろうじゃねえの」と、そんな風に思えればしめたものですよ。

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