夏休みの若者たちが森の中でキャンプ。そこへ突然現れるどろどろ男。若者たちはびっくりして逆に襲いかかり、怪我をさせて追い払ってパーティ続行。あの男、異形の者だがもしかしてただの皮膚病患者じゃなかったのかとちょっと不安。
さて翌日、体調不良の末に皮膚が腫れ上がって恐ろしい形相に変化するキャンプメンバーのひとり。来た来た来た。ゾンビか。病気か。呪いか。何か知らんが、とにかく感染したのは間違いない。さてどうなる。
という感じのストーリーです。アメリカ映画で若者たちで森でキャンプで伝染でホラーなんていう映画ですから、大した期待もせずに見るのが普通です。
ところがこれがまあ、めちゃくちゃ面白い。
何が面白いか、今では誰もが簡単に説明できます。「イーライ・ロスだから」
そうですね、今ではイーライ・ロスという人はタランティーノのお仲間として誰もが認知しているぶっ飛び系味わい系おとぼけ系ハイセンス系ちゃらちゃら系炸裂系怖い系の才能ある変な人です。監督作品も面白いし役者としても個性的です。
「キャビン・フィーバー」の次作が「ホステル」、その後は「グラインドハウス」や「イングロリアス・バスターズ」にも深く関わっています。
私も実は「ホステル」を見てあまりのハイセンスさに感銘を受けたので同監督のデビュー作である「キャビン・フィーバー」を手に取ったという経緯がありました。
さてしかし監督名だけで「ははーん」と面白さが伝わるような映画マニアに向けたサイトではありませんので、ここは「キャビン・フィーバー」の面白どころを伝えてみようと思います。
まずはホラー要素。これはは流石です。ホラー要素の中の本気の怖さと躁病的な面白さを兼ね備えます。これは今となってはサム・ライミ以来の良き伝統となりました。この後の「ホステル」「ホステル2」も頷けます。
登場人物です。主人公周りはアメリカ産ホラー映画にありがちなキャンプする若者たちですが、でもちょっと他とは違います。あまり馬鹿でもありません。ところ構わずセックスしたり「ひゃっほー」としか言えない動物のような低脳馬鹿ではなくて、人間味があり、すっとぼけていて面白い面々です。キャンプを囲んでお話するシーンとか、独特の間合い味わいが感じられるでしょう。この味わいに気づいた瞬間私は思わず「ひゃっほー」と心で叫んだものでございます。
注目は主人公たちの周辺の登場人物です。とりわけ森の外れに住む子供のいる家族が凄まじい面白さです。決して派手な登場ではありませんが、味わい深さは一級品。何でもなさそうで超個性的キャラクターをそれとなく配置するこのセンスが都会的です。この要素こそが「キャビン・フィーバー」を大ヒットさせイーライ・ロスの名を一躍世に轟かせた一番の理由であると思っています。タランティーノと仲良しで当然、納得の人物造型です。
シナリオ的にも捻ってなさそうで捻りまくってます。大きく捻らず、小さく捻っているのがミソです。この小さな捻りが小気味よくて、見ているとニヤニヤしてしまうんですよね。オチも皮肉が効いた小気味よいものとなっています。
という感じで、荒削りながらイーライ・ロスの個性が炸裂しているデビュー作「キャビン・フィーバー」でした。「ホステル」や「グラインドハウス」を気に入っているあなたなら間違いなく気に入ります。