ホロコーストの映画なわけですが、重い映画を敬遠気味な方でもこれは観るに値するでしょう。
収容所所長に昇進した将校の父を持つ少年は、ベルリンからどこかの田舎に越してきて退屈しています。ちょっとした冒険の果てにフェンス越しの「農園」に辿り着き、そこで縞模様のパジャマを着たユダヤ人少年と出会い、少しずつ仲良くなっていきます。
少年の目から見た戦争・ホロコーストです。少年を含む家族の目から見た戦争でもあります。政治を、俯瞰した評論家の目線ではなく、軍人目線でもなく、あくまでも一個人・特に子供の体験レベルで描くのはある種の映画では定番です。単純化し、相対化し、よりリアルに、より説得力を持って、そしてより衝撃的に政治や戦争や歴史を描く効果的な技法でしょう。
ちびっ子目線による政治の作品にはこのサイトで取り上げたものでは「ぜんぶ、フィデルのせい」や「マチュカ 〜僕らと革命〜」などがあります。それら子供目線による政治の映画は元を辿れば「禁じられた遊び」や「アンネの日記」の系統と見ることができるかもしれません。
事情がわからぬ子供の目には「農場」や「パジャマ」や「ヒゲの革命家」のように映ります。この無邪気さが残酷さをより一層引き立てるんですね。まったく、映画を作る人ってのはとんだサディストです。
ユダヤ人少年(ジャック・スキャンロン)がたいそう良いです。この子の表情、仕草、これはたまりません。ちびっ子映画ファンなら悶絶必至。
主人公少年の母親も印象的です。役割的にも、演技的にもです。演じた女優はヴェラ・ファーミガ。古風な美女で、あまりにも魅力的なのでDVDの特典映像のインタビューを確認すると映画の印象とは随分違っていて驚きました。別の意味で魅力的な女優さんだと確認できたわけですが、演技ってのはすごいもんです。そんでもって、特に大戦時やそれ以前の時代のファッションや化粧はやはり最高だなあと改めて感じ入った次第です。
ヴェラ・ファーミガは「エスター」で主演をがんばりました。その後は「マイレージ、マイライフ」で注目もされましたね。
監督マーク・ハーマンは「ブラス!」(Brassed Off-1998)をヒットさせた方です。「ブラス!」も大きな社会問題を不況の街のブラスバンドという設定に落とし込んで描いた地味ながら優れた作品でしたね。
ホロコーストの悲劇を、子供と家族中心に繊細に描きました。必要以上に大袈裟に煽ったりドラマチックに盛り上げまくったりせず、日常と隣り合わせにある政治をホームドラマのように演出します。
まるで童話のようなこの映画、これはご家族揃って、子供さんも交えてしっかりと観ておくのがよいでしょう。
2010.02.02
※ 実際に家族揃ってお子さんも交えて観たら、見終わったとき家族中が阿鼻叫喚で大変なことになりますがそれも大事。逃げ隠れしてはいけません。
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