緻密に物語を構築していくクリストファー・ノーラン、このデビュー作でその特徴がすでに開花しております。
漠然とストーキングしていた作家志望の主人公、ある日付け回していた相手にそれがバレてしまいます。しかしその相手も、他人のアパートに侵入して私生活をのぞき見るという行為を繰り返している男で、二人は仲良くなり、主人公は男にどんどん感化されて不法侵入ごっこの虜になっていきます。
ある日侵入先で見つけた女性の写真に興味を持ち、今度はその女性を尾行し始めます。さてさて、だんだんそれらしい展開になってきました。
「メメント」ほどややこしくないながら、時間を交差させパズルのように物語を進めます。
軽やかにステップを踏む巧みな構成、ドキドキする出来事、小憎たらしく味わい深い登場人物、スマートな展開、煙に巻く真相、余韻のエンディング、これは面白い。
デビュー作でこの才能、やはりただ者じゃありませんね。
この後、記憶を維持出来ない男の話を思いつくのは必然だったとも言えるかもしれません。
まさかバットマンを撮るようになるとは予想だにしなかったですが。
2009.03.17
さて才能あるクリストファー・ノーランですが、イギリス人の父とアメリカ人の母の元に生まれ、ロンドンとシカゴで幼少期を過ごした後、ロンドン大学に入学、この頃から短編映画の制作をはじめたそうです。
「フォロウイング」も大変良くできた映画ですが、二作目の「メメント」(2000)で一気に大注目、各賞を受賞し、次いでメジャー作品「インソムニア」(2002)を監督、その後はお馴染み「バットマン ビギンズ」(2005)に大抜擢でしかも大ヒット高評価を受けるという経歴です。運の良い成功者というよりヒットメーカーとしての才能も十分あったということなんでしょう。
バットマン2作を挟んでの「プレステージ」みたいな妙な映画を作る個性も残しています。
インディペンデントで良作を作っていた監督が娯楽大作に大抜擢されることはよくありますが、両方でヒットと高評価を得、古い固執したファンからも嫌われないという点が 希有ですね。しかもリメイクの「インソムニア」を除いて、全て脚本も書いているのだから大したものです。バットマンシリーズも監督・製作・原案・脚本がクレジットされています。
2010年の「インセプション」ですが、これまた好評のようでした。
派手そうな映画だから劇場で観る価値あったと思うんですが未見なのでして。
(さらに追記:この後見ました->インセプション)